宇宙人文学

宇宙人文学に挑戦しよう! (平成26年度SSH連続講座)

【概要】

宇宙人文学とは,宇宙技術と人文科学分野の融合を目指した新しい領域の学問である。 宇宙の資産、たとえば軌道上の衛星から取得されたデータを利用すると,地上の起伏に富んだ複雑な地形を, コンピュータの画面上に3次元の画像として構築できる。真上からはもちろんのこと,東西南北からの 鳥瞰図的な視点で観察することも容易になる。これにより遺跡と遺跡,あるいは史跡と史跡の位置関係や 地理的な条件などを,マクロとミクロの視点から考察できる。さらには歴史上の地球温暖期における 海岸線の3次元的な変化さえ自在に再現することが可能になる。

 

このように,最先端の宇宙技術を理解しさらにそれを人文学のさまざまな学問領域に積極的に 利用していくことで,既知の事柄を再認識するときの裏付けとしたり,或はひょっとしたらこれまでは 見えなかった多くの歴史的な出来事が、科学的な分析によって浮かび上がってきたりするかもしれない。 宇宙人文学はそんな魅力ある学問である。

 本校では平成24年度から宇宙人文学の講座を開設しています。
・平成25年度の講義内容はこちら
・平成24年度の講義内容はこちら をご覧下さい

  講師:JAXA研究員,京都大学特任教授,サイエンスジャーナリスト 中野不二男先生      (株)日経映像 映像チーフディレクター 田中宏明先生

【実施内容】

第1回 5月24日 

 「宇宙人文学と何か」「通信のしくみ」の講義,および「鉱石ラジオの製作」を行いました。はんだ付けを初めて経験する生徒も何人かいましたが,全員が夢中になってそれぞれのオリジナルのラジオを作り上げることができました。完成作品を持って中庭にあつまり,アンテナに結線すると,ラジオ放送を各自聞くことでき,見事にラジオ製作が成功していることを確認できました。  昨年度一年間連続講義に参加して研究テーマが決まって来た2年生は,平行して,衛星データの解析を行いました。

第2回 6月28日

昨年度は,通信のしくみの講義実習の後,新潟長岡の巡検及び実習に出かけましたが,参加する生徒たち全員に事前に衛星データ処理の初歩についてせめて教えてから出かけた方がより効果的だという反省から,この回に衛星データ処理の初歩的な指導を行いました。また,2年生の熟練者達には,別途,研究テーマをより具体的に進める指導に入りました。

第3回 8月24日−26日 新潟長岡巡検実習

昨年度,この巡検を実施したことにより生徒達の学習内容についての理解が深まり,また,興味関心の向上が非常に大きく見られたことから,今年度も同様な巡検を実践することとしました。
 現地実習を踏まえながら衛星データを処理して標高データと複合する技術を学び,現地での照合確認を行うことができました。また,新潟県立歴史博物館にて現地の歴史や地理などについての詳細を学びました。(生徒17名,引率教員4名,講師2名の合計23名が参加)

第4回 10月4日

 夏の巡検以降,自らの研究テーマ設定などを自主的に進めて来た生徒を主な対象として,講義実習を行いました。また,今年度4月以降に進められてきている宇宙人文学の先端的な研究についての講義もありました。第6回の講義実習において,各自の研究の中間発表を行うことを生徒に提示しました。 (10月4日は学校説明会を兼ねて実施)

第5回 11月8日

各自のテーマに基づき,それぞれ選択した地域の研究に使用するため,衛星データの入手,保存,加工を中心に実習しました。得られた衛星データおよび標高データを重ね合わせて3Dデータに変更する技術を身につけてしまった生徒が多くみられ,各自,不明な点を積極的に講師に質問しながら実習を進めることができました。中間発表に向けて,講師の方々から適切な助言を得ることができ,研究がよりはかどった様子でした。

第6回 11月29日

 宇宙人文学の研究の中間発表を行いました。生徒それぞれの発表に対して,講師の助言指導,参加した教員の方々からの質問,本校教員の助言がありました。的確なアドバイスをいただき,生徒の研究心はさらに向上した様子でした。参加した生徒(本校1〜2年生の希望者)の発表テーマ
(1)田老地区の石碑
(2)備中高松城水攻めについて
(3)貝塚の立地の比較〜宮城,千葉、広島(宮島)について
(4)秀吉の行軍(中国大返し)
(5)城を攻めてみよう
(6)西海道と太宰府の北九州における攻防
(7)鎌倉幕府の滅亡の地理的要因
(8)植物の活性の状態と気温の関係
 これらの発表のうち,優れたものであると講師から判断された(1)〜(3)については,1月10日から京都大学で開かれる宇宙ユニット主催のシンポジウム「宇宙に広がる人類文明の未来」にて,口頭発表及びポスター発表することと決定しました。(11月29日は,公開研究大会で実施)

第7回 12月27日

 京都大学宇宙ユニット主催のシンポジウムに参加する生徒対象に,研究内容に関する指導を実施しました。
3チーム5名の生徒が参加し,本番に向けて解決しておくべき課題を詳細に見い出し,冬休みの宿題として各自持ち帰ることができました。

第8回 1月10日−12日

  京都大学に出向き,シンポジウムにて口頭発表およびポスター発表をしました。
発表タイトル
(1)田老地区の石碑=ポスター発表
(2)備中高松城水攻めについて=ポスター発表
(3)貝塚の立地の比較〜宮城,千葉、広島(宮島)について=口頭発表及びポスター発表
 また,本校教員も,本校における宇宙人文学の取り組みについて,ポスター発表しました。  どのポスターにも大勢の参加者がひっきりなしに訪れ,熱心に議論していました。また,口頭発表も,多くの質問や助言をいただくことができ,大変有意義に感じた生徒ばかりでした。

口頭発表(京都大学にて)


衛星データの利用例(生徒が作成)


衛京都大学百周年時計台記念館(発表会場)前にて講師の中野不二男先生と

生徒の感想から

京都大学のポスター発表は,初めての経験でしたし,あのような場での口頭発表も初めてで, 実際に京大に行くまでどのような雰囲気の中,どのように発表すれば良いのか予想がつかず, 行く前は正直少し怖かったです。でも,シンポジウムは予想と違っていて,和やかな 雰囲気で年齢や立場に関係なくアドバイスや質問をして下さったり,意見して 下さったりして非常に楽しかったです。

交流会では,京大の学生さんや大学院生さんが気さくに話しかけて下さり, 大学生活や自分たちのやっている研究についても紹介して下さりました。また, ある京大の物理学者の方が,私たち相手に相対性理論について語って下さりました。 内容はよくわかりませんでしたが、研究を心から楽しんでおられるのだなと感心しました。 その場にいらっしゃった方が皆,研究(仕事)が好きで楽しんでいるように思え, 私も将来何の仕事をするにしても,自分が好きで楽しめるような仕事をしたいなと思いました。

松本前総長に本当にお会いできる何て思っていなかったので,感激しました。 また,とても気さくで面白い方だったのにも驚きました。

最初は,宇宙人文学が何かも分からないまま,鉱石ラジオを作ってみたいという思いだけで参加しただけだったのが,京大で発表する機会まで頂け,興味本位で申し込んで良かったなと思っています。コンピュータを扱うのが非常に苦手なのに,やりたかったために,周囲の人に迷惑をかけましたが,毎回とても楽しめて,感謝しています。

中野先生の研究を毎回聞くことができたのも面白かったです。交流会で何人もの大学生から「中野先生に高校生のうちから指導してもらえるなんていいね!」と言われ、自分がどれだけ幸運なのか改めて実感しました。